個人事業主の場合、所得税は累進課税制で、収入が増えるほど税率が高くなります。小規模な事業運営では税負担を抑えやすい反面、収入が多くなると税金が重くなります。
法人は、法人税が一律（約23%）で、収入が増えても税率が変わりません。また、役員報酬や経費を柔軟に設定できるため、税負担を軽減しやすいのが特徴です。

個人事業主は、国民健康保険や国民年金に加入しますが、自己負担が多く、将来の生活への不安が残ることがあります。
法人の場合、法人が社会保険（健康保険、厚生年金）に加入します。ただし、法人は個人の分と同額を負担する必要があるため、ひとり社長にとっては実質的に社会保険料の負担が2倍になります。また、個人分は人件費、法人負担分は社会保険費として経費計上可能です。その結果、個人として見れば将来の年金受給額は増えますが、法人側では一時的に出費が増える点に注意が必要です。

個人事業主は規模が小さいため、取引先から信頼性が低いと見なされる場合があります。特に長期的なパートナーシップを求められる場合、不利になることがあります。
法人は信頼性が高まり、大手企業や官公庁との取引も可能になりやすいです。法人化することで安定した取引を確保しやすくなります。

▶税負担の調整が可能になる
個人事業主の場合、所得が増えると累進課税による税率上昇の影響を受けますが、法人化すると法人税が適用され、税率の違いを活用できる可能性があります。また、役員報酬を適切に設定することで、所得の分散が可能になります。さらに、法人化すると健康保険や厚生年金への加入が義務化されますが、役員報酬を最低限に設定すれば社会保険料の負担を抑えることができます。ただし、その分、将来の年金受給額も低くなるため、報酬の設定は慎重に行う必要があります。なお、法人で社会保険に加入した場合、個人事業を並行して行っていても国民年金や国民健康保険に加入する必要はありません。

▶信用力向上とビジネスチャンスにつながる
法人格を持つことで、取引先からの信頼度が向上する効果も期待できます。特に大手企業や官公庁との取引では、法人化していることが取引条件の一つとなることがあり、信用力の向上が新たなビジネスチャンスにつながる可能性があります。また、法人として銀行融資を申し込むことも可能ですが、実際の審査は事業の収益性や信用力によるため、法人化だけで必ずしも融資が受けやすくなるわけではありません。

▶設立や運営費用が必要
設立や運営にコストがかかります。法人設立には登録免許税や定款認証費用などの初期費用が必要であり、運営中も決算書の作成や税務申告など専門的な知識や外部のサポートが求められる場合があります。また、法人化によって社会保険の加入が義務化されるため、法人が個人分と同額を負担する必要があり、現金流出が増える点には注意が必要です。

▶手続きが煩雑
さらに、個人事業主に比べて税務や労務の手続きが煩雑になり、会計処理が複雑になることもデメリットと言えるでしょう。

個人事業主は所得税が課せられますが、法人化すると法人税が適用されます。個人事業の場合、所得税を支払った後のお金は自由に使えます。
一方、マイクロ法人の場合、法人税を支払った後のお金はあくまでも会社の資産であり、事業目的に合った使い方が求められます。ただし、事業に関連する支出は経費として計上できるため、課税対象となる利益を抑えることが可能です。また、法人のお金を個人が自由に使うには、役員報酬として自分自身に給与を支払う必要があり、これには所得税がかかります。
したがって、収益の額や性質に応じて、どちらで収益を計上するかを慎重に検討することで、税負担を最適化できます。
たとえば、法人では経費として認められにくい支出でも、個人事業として行うことで経費計上できる場合があります（ただし、事業に関連する支出であることが前提）。